慢性疾患患者との距離感

看護師と慢性疾患を抱える患者との関係は、長期間にわたって続くことが多い。定期的なケアが必要な患者とは、複数年の付き合いとなることも珍しくないだろう。

そこで問題となってくるのが、患者と看護師との関係性だ。

いうまでもなく、医療関係者側と患者およびその家族との関係性は、一定の境界を保った状態にあるべきだ。しかし、日々患者やその家族と接する看護師は、この境界線を無自覚に超えてしまうことも多い。たとえば安易な共感、親近感を出すためのタメ口、補助や介助を必要としない状況でのスキンシップなども、そうした行為に当たる。

このような行為の先にあるのは、患者とその家族による医療への多大な依存だ。長期にわたるケアが必要な慢性疾患を抱える患者とその家族が、医療に依存してしまうことは少なくない。臨床にあたる看護師は、こうしたリスクも常に念頭に置いて日々の看護を実践すべきだろう。

諸外国においては、医療関係者と患者の関係性を法律により明文化している国が珍しくない。その一方で日本においては、看護師を含む医療関係者と患者の関係性を規定する法律などは存在せず、個人の倫理観や道徳観にゆだねられているのが実情となっている。

慢性疾患を抱えた患者をケアする看護師は、こうした状況に危機感を持っておく必要がある。なぜなら、長期にわたり同じ患者と接していると、どうしても個人的な感情も芽生えやすいためだ。

看護師と患者がどういった関係性であるべきか、簡単に正しい答えを導き出すことは難しい。ただ、チームとして看護師や医師とこうした問題についてディスカッションしておけば、看護師の無自覚な行為から医療依存の発生を防ぐことに繋がるだろう。